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Event ? Infinity Ventures Summit 2009 Fall via kwout

先週宮崎で開催されたIVSに行ってきました。1年ぶり?の参加でしたが、今回行って思ったのは、新しい情報を得る目的というよりは、色々な人の話を聞いたり、話したりして、自社サービスの方向性や、勝負すべき領域について、二日間じっくり考えることが出来るのが最大の意義なんだなぁと思いました。

そういう意味で、個人的に考えさせられることが多かったのは、1日目のSession 3-A「オープン化で激変するか? 〜 ネット業界地図のゆくえ」と、2日目のSession 8-B「クックパッド 成長の軌跡と今後の展開」でした。

今回考えたことをまとめると以下になります。

(1)「人間のどの欲求を満たすサービスか」が最も重要
(2)単なる暇つぶしを越えたネットサービスとは何か?
(3)そのサービスにお金を払う価値をどう提供するか
(4)いかに決済をさせるか?想定ARPUはいくらぐらいなのか?

(1)「人間のどの欲求を満たすサービスか」が最も重要

まずサービスを考える上で、そのサービスで狙うのは人間のどの欲求を満足させることなのか?を考え抜かなければいけないのだと思います。

その欲求が強ければ強いほど、高いARPUを望めるものでしょう。その欲求がより多くの人に存在するものであれば、多くのユーザーに支持されるサービスとなるでしょう。

COOKPADは「料理を楽しくする」というコンセプトですが、食を楽しみたいという欲求は、強く広いもので、その欲求について考え抜く信念を佐野さんの話から伺い知ることができました。

私はライブドアで数年前から、youbrideYYCという婚活、出会いサービスの課金事業を預かっておりますが、年々その奥深さに気付かされます。出会いや結婚という欲求はとても強く、多くの人に存在するもので、その欲求に答えるサービスを作っていくことは、とても楽しいものです。

(2)単なる暇つぶしを越えたネットサービスとは何か?

暇な時間をつぶしたい、という欲求としては最も多くの人が抱えているものですが、単純に暇な時間をつぶすだけのサービスはすぐに他に取って替わられてしまいます。Session 3-Aで、モデレータの真田さんが、「ソーシャルゲームってすぐ飽きるんじゃないですか?」という質問を投げかけておりましたが、たとえばゲームでも単に暇つぶしだけではない、人との繋がりや、そのコミュニティの中での自分の存在意義など、バーチャルながらも何か他の欲求を満たす要素があるのだと思いますし、どんどんとその傾向が強まっていることを感じます。

mixiの原田さんは同セッションで「ゲームだけがソーシャルアプリではない。wiiは健康など生活に取り入れられるものを狙っているのではないか?ただ、生活習慣に残るものって一番難しいんですけどね。」と話していました。

いずれにしろ、強力なコンテンツホルダー以外が今後サービスを始めるのであれば単に暇つぶしではない、人間の欲求を満足させる要素を取り入れるべきなのでしょう。

(3)そのサービスにお金を払う価値をどう提供するか

さて、COOKPADは人気のレシピを検索するのが有料だったりと、ユニークな課金方法で有名ですが、Session 8-Bでは、その点についても佐野さんに質問が及んでいました。しかし、それに対する回答は非常にシンプルなもので、「最初からユーザー課金をするつもりでサービスをやっている。満足な利便を受けている人からお金をいただくのは当たり前。」とのこと。きっと「料理を楽しくする」という信念のもとに運営し続けて、自然と生まれてきたビジネスモデルであり、周りから見るほど意外なものではないのでしょう。

広告モデルのサービスは、収益源が間接的であり、時に「利用者に良いサービスを提供する」という信念がブレてしまう場合があります。しかし、最初からユーザー課金を成立させるサービスとして考えるのであれば、「ユーザーがお金を払ってまで利用する価値」をどのように提供するかを、先に述べた欲求と照らし合わせて真剣に考えることが必須条件になります。

(4)いかに決済をさせるか?想定ARPUはいくらぐらいなのか?

さて最後に決済の話ですが、やはり現在ネットサービスでは課金のハードルはまだまだ高いものです。携帯キャリアの課金がある程度解放されて改善傾向にはありますが、まだまだオープン化と呼ぶには程遠い現状です。今回のIVSでも、ソーシャルアプリが拡大することで、マイクロペイメントサービスが再び注目されるだろうという話もあったり、ソーシャルアプリでの利用を狙ったECナビのpaycaというサービスは、宇佐美さんが猛烈に力を入れている感じです。逆にソーシャルアプリ市場から小額決済インフラが充実化することで、他のネットサービスでの課金もしやすくなり、個人的には非常に期待しております。

それから、そのサービスの想定ARPUですが、利用するユーザーの満足度への対価と考えるべきなので、ユーザーの依存度などにもよるのだと思います。印象的だったのが、CAのアメーバピグのARPUは1500円程度とオンラインゲームの1/5ぐらいだそうです。これはライトユーザー層中心で、滞在時間もオンラインゲームのそれと比較しても少ないのでは、と想定されます。

今回のIVSで色々と話を聞きながら他にも感じたことはあるのですが、インターネットで起きていることをフィードバックして、リアルな生活を充実させ、消費者も生産者も流通もハッピーになれる世界をひたすら目指しているクックパッドは本当にすごいなって思いました。佐野さんはまだやりたいことの1%しか出来ていないそうですw。

■その他、印象に残ったはなし

・Goodなことはやらない。Bestなことしかやらない。条件は3つ。「料理を楽しくするのか?」「世界で一番になれるのか?」「儲かる仕組みがあるのか?」Goodなものはこれらの二つしか満たさない。どれかが欠けている。(COOKPAD佐野さん)

・ユーザーに課金癖をつけることがもっとも難しい。CAではアメゴールドを1回あげることで購買体験をさせることが成功している(CA西條さん)

・億単位のPVをさばけるエンジニアは日本で限られている。事業は絞らなければいけない(ドリコム内藤さん)

・大企業の社内の決済権者がデジタルネイティブに入れ替わる時期にネット広告は跳ねると思う。あと5年くらい。(セプテーニ佐藤さん)

二日間でいろいろと考えがまとまりました。また明日から頑張ります。